Team DiET メールマガジンバックナンバー

Team DiET Colloquium vol.11

2型糖尿病患者を対象とした超長時間作用型基礎インスリンinsulin degludecの有効性比較検討試験
≪第Ⅱ相臨床試験≫

Insulin degludec, an ultra-long-acting basal insulin, once a day orthree times a week versus insulin glargine once a day in patients with type 2 diabetes
: a 16-week, randomised, open-label, phase 2 trial
(The Lancet, Volume 377, Issue 9769, Pages 924 - 931, 12 March 2011)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(10)62305-7/fulltext#article_upsell

【背景】
 Insulin degludec(デグルデック)は、新しい持効型インスリンで、半減期は24時間以上、
 96時間後も循環血液中に検出されるため、週に3回の注射で血糖コントロールが
 可能とされている。


【目的】
 3カ月以上前に2型糖尿病と診断された患者を対象に
 デグルデックの有効性と安全性を評価し、また投与回数における有効性についても評価する


【方法概要】
 ■対象
  ・経口血糖降下薬(1~2種類)で、2か月以上加療した者
  ・年齢:18~75歳
  ・HbA1c:7.0-11.0 %
  ・BMI:23-42 kg/㎡

 ■割付前スクリーニング
  ・対象者全員、メトフォルミン以外の経口血糖降下薬を中止
  ・メトフォルミンのみを投与し、2週間かけて増量
  ・メトフォルミン1日投与量を2000mgまたは1500mgに調整
  ・1週間投与量を継続しても、空腹時血糖が135mg/dl以上の患者を対象とした

 ■割付(無作為割り付け・オープンラベル)
  ・デグルデック・週3回群(1U=9nmolを20Uで開始)(62名)  
  ・デグルデック・1日1回≪A≫群(1U=6nmolを10Uで開始)(60名)  
  ・デグルデック・1日1回≪B≫群(1U=9nmolを10Uで開始)(61名) 
  ・グラルギン・1日1回群(1U=6nmolを10Uで開始)(61名)
   ※空腹時の目標血糖値を72~106mg/dlとし、患者自身が朝食前に血糖測定・記録。
    担当医が受診時または電話でインスリン量を調整した。

 ■主要評価項目
  16週治療後のHbA1c値

 ■解析
  ITT(intention-to-treat)解析:割り付けられた治療から逸脱した患者も含めて解析


【結果概要】
 ・16週後のHbA1cの平均値は、どの群でもベースラインから1.3~1.5%低下した。
 ・空腹時血糖は、すべて群間で同等に降下した。
 ・平均9点SMBGは、すべて群間で同等に降下した。
  (朝食前、朝食後、昼食前、昼食後、夕食前、夕食後、眠前、am4時、翌朝)
 ・全体の低血糖頻度は8~23%であり、デグルデック・週3回群が23%と最も多かったが、
  有為差は認められず、1回に使用するインスリン量が多いためと考えられた。
 ・有害事象の97%超が軽度から中程度で、発生率に群間差はなく、特異的なパターンを認めず。


【結論要旨】
 インスリン使用歴のない2型糖尿病患者に、メトフォルミンと併用した場合の
 デグルデックの血糖管理はグラルギンと同様である。
 また、新たな有害事象は確認されておらず、全体の低血糖頻度は少なかったことからも、
 デグルテックの週3回投与により、これまで不適切に経口血糖降下薬で加療されてきた患者が、
 インスリン療法を許容し、早期にインスリンを導入できる可能性がある。
 しかし、本試験が非盲検であり、患者の血糖管理意欲、低血糖や副作用の報告に
 影響を及ぼす可能性は否定できない。


-----------------------------------------
【Team DiET の議論】
 メトフォルミンに基礎インスリンを追加し、週3回の投与でHbA1cを1.5%低下したことは
 今後の治療法に影響を与えそうであるが、注目したいのは、減量効果のあるメトフォルミンを
 インスリン開始前に増量したことである。更には、メトフォルミン以外の経口血糖降下薬は
 中止するという徹底ぶり。これは何を意図しているのか?

 通常インスリン投与が始まると体重が増加するが、今回の試験での体重増加は、
 -0.3~0.7kgに留まっており、デグルデック・週3回群では0.1kg増であった。

 「メトフォルミン増量後のHbA1cを1.5%低下させた」と効果を称えながらも、
 「メトフォルミンを増量して体重増加を目立たなくしている?」と疑問がよぎる結果である。


メールマガジン配信のご登録は「メールマガジン登録フォーム」よりご連絡ください。