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Team DiET Colloquium vol.13

耐糖能異常患者を対象としたピオグリタゾン(アクトス)による糖尿病発症抑制効果(ACT NOW)

Pioglitazone for Diabetes Preventionin Impaired Glucose Tolerance
(N Engl J Med 2011; 364:1104-1115 | March 24, 2011)
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1010949


【背景】
 ・耐糖能異常(IGT)は、心血管疾患の発生率と2型糖尿病発症率の上昇に関連している。
 ・そのため、IGT患者への早期アプローチが非常に重要である。


【目的】
 IGT患者へのアクトスを投与における、心血管疾患の発生率および2型糖尿病の発症率の
 抑制効果について検証する。


【方法概要】
 ■対象
  IGT患者(602例)

 ■割付(プラセボ対象・無作為割付・二重盲検)  
  ・アクトス群:303例
  ・プラセボ群:299例

 ■主要評価項目
  無作為割り付けから2型糖尿病発症までの時間
  (検査時にFPG≧126mg/dLまたはOGTT2時間値≧200mg/dLであった場合,
   再度OGTTで確定診断した。)


【結果概要】
 ・2型糖尿病の年間発生率はアクトス群で2.1%、プラセボ群で7.6%であった。
 ・耐糖能が正常化したのは、アクトス群で48%、プラセボ群で28%であった。
 ・アクトス郡は、空腹時血糖値(8.1mg/dL対11.7mg/dL)、食後2時間血糖値(15.6mg/dL対
  30.5mg/dL)、HbA1c値(0.04%低下対0.20%上昇)がそれぞれ有意に低下した。
 ・更にアクトス郡は、拡張期血圧の低下(2.0mmHg対0.0 mmHg)、頸動脈内膜中膜肥厚度の
  低下(31.5%)、HDL値の上昇(7.35mg/dL対4.5mg/dL)と改善がみられた。
 ・体重増加は、アクトス群で大きく(3.9kg対0.77kg)、浮腫の頻度が高かった
  (12.9%対6.4%)。


【結論要旨】
 ・ピオグリタゾン(アクトス)は、耐糖能異常(IGT)から2型糖尿病へ転換するリスクを
  72%低下させたが、有意な体重増加と浮腫の発現を伴った。


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【Team DiET の議論】
 これまでにも、IGT患者の2型糖尿病発症抑制効果試験として、様々な研究が行われています。
 食事・運動療法はメトフォルミンに勝るという結果となったDPP-4試験は衝撃的でした。
 (10-year follow-up of diabetes incidence and weight loss in the Diabetes
  (DPP study))
 今回の試験では、生活介入群はないので、安易に同類の他のstudyと比較できないと考えます。

 試験の対象者は、両郡共にbaselineでのBMI<30が約70%以上、更にはBMI<35が
 40%近くおり、日本人に当てはめるには検証が必要です。
 また、有害事象としてアクトス群では体重増加があり、更にBMIが上がった結果となりました。
 (なおレポート中では、体重増加における害はないとしており、更には、体重が増加すれば
  するほど、β細胞機能とインスリン感受性が改善し、HbA1cが改善したとしています。) 

 レポート上にはプラセボ群との検査値の比較グラフが並んでいますが、注意しなくては
 いけないのが、グラフの縦軸が全て<変化率>である数字のマジックです。
 HbA1cのグラフでも、大きく差がついているように見えますが、アクトス群の変化率は
 最大でも-5.0%であり、実際には、HbA1cは5.5%(baseline)から5.2%に変化したことにしか
 なりません。

 このstudyはアクトスの販売元である武田薬品工業が助成を行い実施したため、試験自体に疑問が
 残りますが、IGT患者への第一歩の治療法について更なる研究が行われることを期待します。


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