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Team DiET Colloquium vol.14

更年期のホルモン補充療法について

Update in Hormone Therapy Use in Menopause
(J Clin Endocrinol Metab; 96(2):255-264 | February 1, 2011)
http://jcem.endojournals.org/content/96/2/255.full.pdf

【背景】
 ・2002年、乳癌の発生率が想定を超えたとの理由で、一般閉経女性を対象とした
  ホルモン補充療法の大規模臨床試験 Women's Health Initiative (WHI)
  Hormone Programが中止となった。
 ・しかし、リスクが増加したのは、エストロゲン+プロゲスチン療法群のみであり、
  エストロゲン単独療法では、乳がんの発症が有意に低下した。


【目的】
 ・他の臨床試験においても、50歳代の更年期女性にホルモン補充療法(MHT)を行った場合、
  心血管系疾患および認知症予防に効果があるという報告などの再評価もされており、
  更年期のホルモン補充療法について再検討を行う。


【結果概要】
 <冠動脈疾患(CHD)のリスクについて>
  ・WHI studyでは、ホルモン補充療法群で冠動脈疾患のリスクが増加したが、被験者の年齢が
   平均で60歳以上であり、高血圧症など健康状態があまりよくなかったことも問題である。
  ・実際に別の研究では、閉経後初期にホルモン補充療法を行うと、CHDリスクを低下させると
   報告されています。

 <乳がんのリスクについて>
  ・WHI studyで報告された乳がんの発症リスクは、エストロゲン+プロゲスチン療法群
   のみであり、エストロゲン単独療法では、乳がんの発症が有意に低下している。
  ・閉経後、ホルモン補充療法開始が遅いと乳がん発症リスクが増加するとの報告もあるため、
   被験者の年齢が高かったWHI studyでは、乳がん発症率が高まった可能性もある。

 <ホルモン補充療法のメリットについて>
  ・WHI studyでは、更年期障害がホルモン補充療法により改善され、QOL向上。
  ・脂質異常、骨代謝を改善。


【結論要旨】
 ・現在の研究は、冠動脈疾患リスクの増加が、ホルモン補助療法開始のタイミングによって
  影響を与えられるかを検討しています。
 ・がんのリスクは全ての年齢層でみられますが、ホルモン補助療法を中止した後に
  発症する報告もされています。
 ・がんのリスクを増加させない更年期障害についての治療が必要あり、現在開発中です。


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【Team DiET の議論】
 ホルモン療法については、現在、賛否両論があると思います。
 骨代謝、脂質異常、QOLを改善するなど良い面もありますが、
 乳がんの発症、冠動脈心疾患発症の増加など悪い面もあります。

 ホルモン療法には個人差もあり、また治療開始のタイミングも関係してくるので、
 一概に「良い」「悪い」を決めれるものではありません。
 メリット、デメリットを患者さんに正確に伝えた上で、治療の選択を患者さんと
 共に考えることが必要と思います。

 ですが、治療の開始時期についても、議論がなされており、今後の動向を見守る必要があります。
 ただし、ホルモン補充療法は、北米や欧州などで多く実施されており、論文も対象が白人単独や
 BMIが高い被験者が多い場合があるため、結論を全て鵜呑みにできない点で注意が必要です。


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