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Team DiET Colloquium vol.25

2型糖尿病を有する慢性腎臓病患者におよぼすバルドキソロンメチルの影響

Bardoxolone Methyl and Kidney Function in CKD with Type 2 Diabetes
(N Engl J Med 2011; 365:327-336 | July 28, 2011)
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1105351

【背景】
 ・2型糖尿病に関連する慢性腎不全(CKD)は腎不全の主な原因であり、
  疾患の進展には炎症と酸化ストレスの両者が寄与する。
 ・経口抗酸化性炎症調節薬であるバルドキソロンメチルは、
  短期試験においては2型糖尿病とCKDを有する患者への有効性が示されている。


【目的】
 ・これまでの臨床試験では8週間のバルドキソロンメチルの投与で
  eGFRの有意な上昇を認めているが、長期的な効果や用量反応関係については
  明らかになっていない。
 ・そこで今回、 2型糖尿病とCKDを有する患者へバルドキソロンメチルを52週間投与し、
  24週時点と52週時点でのeGFRについて評価を行う。


【方法概要】
 ■対象:以下の3つを満たす227例
  ・成人CKD(eGFR 20~45ml/min/1.73m2)患者
  ・2型糖尿病患者
  ・試験開始前8週間のACE-IおよびARBの投与量の変更がないこと

 ■割付(第Ⅱ相無作為化二重盲検プラセボ試験)  
  ・バルドキソロンメチル25mg群:57例
  ・バルドキソロンメチル75mg群:57例
  ・バルドキソロンメチル125mg群:56例
  ・プラセボ群:57例

 ■主要評価項目
  プラセボ群と比較したバルドキソロンメチル群におけるeGFRのベースラインからの
  24週時点での変化量

 ■副次的評価項目
  52週時点での変化量


【結果概要】
 ・バルドキソロンメチル群では、プラセボ群と比較して 24 週時点での eGFR 平均値(±SD)が
  有意に高く、この上昇は52週まで維持された。
    【24週時点でのeGFRの平均値】群間差(P<0.001)
     ・25 mg 群 : 8.2±1.5 mL/分/1.73 m2
    ・75 mg 群 : 11.4±1.5 mL/分/1.73 m2
    ・150 mg 群 : 10.4±1.5 mL/分/1.73 m2
    【52週時点でのeGFRの平均値】
    ・25 mg 群 : 5.8±1.8 mL/分/1.73 m2
    ・75 mg 群 : 10.5±1.8 mL/分/1.73 m2
    ・150 mg 群 : 9.3±1.9 mL/分/1.73 m2

・また、52週までバルドキソロンメチルを投与し、56週時点(4週間薬剤中止後)で評価した結果、
 56週時点でもバルドキソロンメチル投与群ではeGFRの上昇が継続していた。
    【各群での52週時点との差】
     ・プラセボ群:- 0.6±1.1 mL/分/1.73 m2
     ・25mg群 : 0.7±1.6 mL/分/1.73 m2
     ・75mg群 : 2.5±1.6 mL/分/1.73 m2
     ・150mg群 : 2.3±1.7 mL/分/1.73 m2

 ・バルドキソロンメチル群で最も高頻度にみられた有害事象は筋痙攣であったが、
  多くは軽度であり、用量依存性であった。
 ・その他には、低Mg血症、ALTの軽度上昇、胃腸管に対する影響が多く認められた。

【結論要旨】
 ・2型糖尿病を有する慢性腎臓病患者へのバルドキソロンメチル投与は、
  24週の時点でのeGFRの改善に関連していた。
 ・eGFRの改善が52週の時点まで持続していたことから、今後バルドキソロンメチルが
  CKDの治療に有望である可能性が示唆される。


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【Team DiET の議論】
 今回の試験では、糖尿病性腎症患者は対象外となっていたが、現実的には2型糖尿病から
 糖尿病性腎症を発症する割合も多い。
 本試験では、低いeGFRの割に尿中蛋白量が少ない患者が多いが、通常の糖尿病腎症では
 尿中蛋白量の多い例が多く、そういった例においてもバルドキソロンメチルで腎機能の改善が
 見られるか知りたいところである。

 今回、投与群で血中Mg、UAが有意に低下や体重減少が見られた。
 (体重減少については、相関はないとしているが。)
 バルドキソロンメチルがどのようにkeep1-Nrf2経路を活性化するのかを本論分の中で
 明らかにしていないため、これらの変化の原因を考えてみても、推測の域を超えず、
 興味がかきたてられる部分である。

 また、実際に薬として、長期の使用に堪えられるか疑問が残る。
 CKDを中心に検査を行っているが、他の病態との関連についても考え、全体のホメオスタシスに
 影響を与えないか調べる必要がある。


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