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Team DiET Colloquium vol.33
偽性副甲状腺機能低下症(PHP)の診断と治療について
Pseudohypoparathyroidism: diagnosis and treatment
(J Clin Endocrinol Metab; 96(10):3020-3030 | October 1, 2011)
http://jcem.endojournals.org/content/96/10/3020.full.pdf [ch0]
【背景】
・偽性副甲状腺機能低下症(PHP)は、非常にまれな疾患であり、
有病率は10万人に0.79人といわれている。(日本でも430例程度である。)
【目的】
・偽性副甲状腺機能低下症(PHP)の診断基準、治療法について検討を行う。
【方法概要】
<偽性副甲状腺機能低下症(PHP)について>
・PHPは歴史上最初のホルモン抵抗性症候群であり、副甲状腺ホルモン(PTH)分泌が
保たれているにも関わらず、腎臓でのPTHに対する反応が低下しているため、
低Ca血症や高リン血症などの副甲状腺機能低下状態を呈する疾患である。
・cAMP産生障害により、PHP-Ⅰ型またはPHP-Ⅱ型に分けられる。
・PHP-Ⅰ型は、外因性PTHに対して尿中cAMPが上昇せず、尿中リン酸も上昇しない。
・PHP-Ⅱ型は、外因性PTHに対して尿中cAMPは正常に上昇するが、尿中リン酸は
上昇しない。
(PHP-Ⅱ型の臨床データは少なく、PHP-Ⅱ型の存在自体にも疑問が残されている。)
・PHP-Ⅰは、AHOおよびGs蛋白活性の低下を認めるPHP-Ⅰa型、AHOを認めるが
Gs蛋白活性の低下を認めないPHP-Ⅰc型、これらに異常を認めないPHP-Ⅰb型がある。
(PHP-Ⅰc型については当初の報告例以外には、ごく少数例しか確認されていない。)
・AHOやGs蛋白活性の低下を認めるものの、低Ca血症を認めない偽性偽性副甲状腺機能低下症
(PPHP)も発見されている。
<オルブライト骨異栄養症(AHO)について>
・短指、丸顔、低身長、中心性肥満、異所性骨化のほか、精神遅滞の臨床所見を包含
・特に第3中手骨および第4中手骨の短縮による短指は典型的とされる。
<PHP-Ⅰa型およびPHP-Ⅰc型の診断について>
・最も明白で特徴的な異常は、腎臓のPTH抵抗性であるが、PHP-Ⅰa型の患者の中には、
一生、血清Caが正常な人も存在する。
・PHP-Ⅰa型の患者(特に女性)で、性機能低下症が見られ、不完全な性成熟、無月経あるいは
過少月経、または不妊として現れる。
・PTH抵抗性、低Ca血症や高リン血症などから、骨疾患などが考えられていたが、
最近の報告では、PHP-Ⅰa型の患者(小児・大人)の骨密度は正常と示された。
<PHP-Ⅰb型の診断について>
・PHP-Ib型は、他の内分泌線の異常または身体的異常(AHO)がなく、Gs蛋白活性も正常で、
腎臓のPTH抵抗性を示し、大部分は低Ca血症に基づく。
・骨に対する作用としては、症例により差が大きく、判断の基準にはならない。
<GNAS遺伝子について>
・家族性PHPの大多数は、常染色体優性遺伝である。
・母親から遺伝した場合、多重ホルモン抵抗性と共にAHOを示すPHP-Ⅰa型だが、
父親から遺伝した場合、ホルモン抵抗性はないがAHOを示すPPHP
(偽性偽性副甲状腺機能低下症)になる。
・PHP-Ⅰa型の発症原因は、GNAS遺伝子変異およびゲノムインプリンティング
であるのに対し、PHP-Ⅰb型の発症原因は、GNAS遺伝子変異ではなく、
ゲノムインプリンティング異常であると考えられている。
・しかし、GNAS遺伝子変異については、大多数のPHP-Ia型およびPPHP患者で発見されたが、
患者の20~30%ではGNAS遺伝子変異が発見されなかった。
・更にPHP-Ib型でも弧発例が多く、遺伝のみが原因でない可能性もある。
・PHP-Ⅰc型及びPHP-Ⅱ型はごく少数例しか症例は確認されておらず、原因は不明である。
<最近の報告について>
・PHP患者全体では、赤血球膜中Gs活動性が低下している場合、AHOを示すことが多いことが
報告された。
・これにより、他組織でのGs活動性低下がAHOの原因である可能性が示唆され、
Gs蛋白活性低下の有無で判別していたPHP-Ⅰa型とPHP-Ⅰc型の分類が困難になった。
・また進行性骨異形成(POH)とAHOに共通する遺伝的基盤があり、POHとPPHPがひとつの
形態である可能性も示されている。
<フォローアップについて>
・AHOの臨床徴候は、誕生時やその直後だけでなく、成人になってから現れることもあり、
予測は困難である。
・また、内分泌異常も異なる段階で出現し、重症度も様々である。
・最初のスクリーニングは短指のレントゲンにて評価を行う。
・一般にPHPは、血液生化学(PTH、Ca、P、TSH)および尿中Caに変化が現れるので、
疑わしき症例では、毎年モニターすべきである。
・また、子ども~成長期には特にGH不全症に注意する必要がある。
・特定のAHO特徴(特に異所性骨化および精神遅滞の存在/発展)についてフォロー
すべきである。
<治療について>
・低Ca血症の長期治療については、活性型ビタミンD製剤を使用し、血中Ca濃度の維持に
努める。
・しかし、PTHだけ上昇してCaが正常な場合、治療することに関して決定的な
データはないため、「将来の骨への影響」と「尿中Ca増加によるリスク」を考慮して
判断すべきである。
・その他のホルモン異常に関しては、定期的なフォローアップが必要であり、
甲状腺機能低下症や性腺機能低下症においては、それぞれの確立された治療法に従う。
・成人成長ホルモン(GH)分泌不全症については、成長曲線に関わらず、思春期以前では、
すぐに治療を開始すべきである。(低身長はGH欠乏に加えて、成長プレートの早期癒合と
思春期の成長スパートがないことなどからおきやすい)
【結論要旨】
・PHP-I型は、GNAS遺伝子の先天的/後天的欠損によって引き起こされる疾患グループである。
・過去数年にわたるPHP患者の分析から、GNAS表現・機能および規則について、新しい見地が
提供されているが、AHOの表現型・分子の発現機序・ホルモン抵抗性・
インプリンティングの欠損など多くの不明瞭な点がある。
・この複雑な遺伝子およびユニークな病気を理解するために、更なる臨床および実験報告が
必要である。
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【Team DiET の議論】
今回のレビューを読めば、PHPの発現機序や診断、治療法について、更に詳しく判るかと
期待していたのだが、少し期待外れであった。
PHPは特定疾患に指定されている疾患であり、原因が明確でなく、治療法が
確立されていないため、レビューや症例報告などを読み、治療を進めていかなければならない。
折しも、当科に糖尿病精査加療目的で入院した患者さんの中で、PHP疑いの患者が見つかり、
診断にあえいでいるところであった。
オルブライト徴候(AHO)は認めるものの、血清Ca・P・PTHは全て正常であり、また多彩な
臓器形態異常を伴うため、他の疾患である可能性も考える必要があった。
大学病院の使命として、患者さんの全ての疾患に正確に病名を付けなければならないため、
あらゆる検査結果から考えられる疾患を整理し、一つずつ的確に排除していかなければならない。
そのためにも、最新の論文やレビューに目を通し、常に新しい情報を入手しいていくことが
大切である。
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