Team DiET メールマガジンバックナンバー

Team DiET Colloquium vol.37

新規2型糖尿病患者を対象とした強化食事/運動療法の比較試験(Early ACTID試験)

Diet or diet plus physical activity versus usual care in
patients with newly diagnosed type 2 diabetes: the Early
ACTID randomised controlled trial
(The Lancet, Volume 378, Issue 9786, Pages 129 - 139, 9 July 2011)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(11)60442-X/fulltext#article_upsell

【背景】
 ・2型糖尿病における運動や食事療法が、HbA1cを低下させるというメタ解析の報告はあるが、
  観察が短期間、少数の集団、新規2型糖尿病患者が少ないといった問題点があった。
 ・また食事療法に運動を加えることが、食事療法単独と比較し、HbA1cや血圧に影響を
  与えるかを検討したstudyは少ない。
 ・新規2型糖尿病患者の身体活動のレベルを上げるためのケアが必要だが、その前に運動を
  付加することの有用性を明確にする必要がある。


【目的】
 ・Early ACTID(Early Activity in Diabetes)試験の目的は、
  新規2型糖尿病患者において身体活動を強化することが、食事療法など従来の健康管理に比して
  血糖、血圧、脂質代謝、インスリン抵抗性、インスリン分泌能にどれだけの影響を持つかを
  検討することである。


【方法概要】
 ■デザイン:多施設ランダム化比較試験

 ■対象:以下の条件を満たす新規2型糖尿病患者:593名
  ・過去5-8カ月以内に2型糖尿病と診断された30歳以上80歳以下の患者
  ・BMI≧25kg/m2の患者
  ・心疾患などの疾患がなく、運動が可能な患者

 ■割付
  ・被験者を「標準治療群:強化食事療法群:強化食事/運動療法群=2:5:5」で割り付け、
   【1年間)追跡調査した。 
  ・標準治療群(99名):
     導入期に1回の食事指導と6カ月ごとの追跡
  ・強化食事療法群(248名):
     5〜10%の減量・維持を目的とした強化食事療法
     毎月の看護師による助言および3カ月ごとの栄養士による指導
  ・強化食事/運動療法群(246名)
     強化食事療法群と同一の食事指導
     週5回以上、30分間の活発な歩行
     万歩計を装着し記録し、達成目標を徐々に上げていく

 ■主要評価項目
  6カ月後と12カ月後のHbA1c、血圧の改善

 ■副次評価項目
  6カ月後と12カ月後のインスリン抵抗性、インスリン分泌、脂質代謝、身体活動強度、
  身体計測値(体重、BMI、腹囲)、服薬内容の変化


【結果概要】
  ・HbA1cは、介入を行った2群とも改善が見られたが、両群で差は見られなかった。
  ・血圧は、全ての群で改善が見られなかった。
  ・脂質代謝については、6ヶ月後の時点で強化食事/運動療法群でわずかに改善が見られたが、
   12ヶ月後には全ての群でほとんど差は見られなかった。
  ・インスリン抵抗性については、介入を行った2群とも改善が見られたが、インスリン分泌は
   全ての群で改善が見られなかった。

  ・BMIは、介入を行った2群とも改善が見られたが、両群で差は見られなかった。
  ・身体活動度は、強化食事/運動療法群で有意に改善が見られた。
  ・服薬については、標準療法群で薬物療法を開始する割合が介入2群に比べて3倍高かった。


【結論要旨】
  ・新規2型糖尿病患者については、早期に強化食事療法を行う事で、標準治療群に比べ、
   血糖コントロールや体重管理において有用であることが本試験により証明された。
  ・また強化食事療法では、内服薬と同等の効果で、インスリン抵抗性の改善を介した
   HbA1c低下が見られた。
  ・しかし、強化食事療法に運動療法を追加しても、更なる改善は見られなかった。


-----------------------------------------
【Team DiET の議論】
 結果だけを見てしまえば、あたかも運動療法が血糖コントロールや体重の改善に
 効果を及ぼさないように見えてしまうが、運動療法を行った群と行わなかった群との
 1日の運動時間はほとんど差がなく、運動強度もわずかしか上がっていない程度で
 運動療法について論じてしまうことが、そもそもの間違いである。

 健常人でも同じだと思うが、中途半端な運動は「運動をした!」という達成感ばかりが
 先攻してしまい、普段より食事量が多くなる傾向にある。

 運動療法については、万歩計による管理と看護師による指導のみで、専門的な運動指導は
 行われていなかった。
 また運動の内容や運動強度、運動開始のタイミングなどあいまいな点も多く、次回、
 同様の試験を行うのであれば、確率性の高い運動療法を用い、比較群との運動内容に
 明らかな差が生じた時点で、結論を出してもらいたいと思う。

 欧米の食事療法によるHbA1cの低下は、0.4〜0.6%とされており、今回の結果と合致する。
 また、食事療法はインスリン分泌は促さないもののインスリン抵抗性を下げることが証明された。
 そのことからも、新規2型糖尿病患者への食事介入の有無は、予後の改善に変化をもたらすことが
 わかった。

 本論文では、運動による効果よりも、新規2型糖尿病患者への食事介入による有用性を
 強く論じて、医師と栄養士らが協力して食事指導を行えるシステムの確立に向け、
 一役を買ってもらいたいと思う。


メールマガジン配信のご登録は「メールマガジン登録フォーム」よりご連絡ください。