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Team DiET Colloquium vol.61

4〜9歳の小児1型糖尿病患者を対象としたリアルタイムCGMの有効性比較検討試験

A randomized clinical trial to assess the efficacy and safety of
real-time continuous glucose monitoring in the management of
type 1 diabetes in young children aged 4 to <10 years
(Diabetes Care, Volume 35(2), Pages 204 - 210, February 2012)

http://care.diabetesjournals.org/content/35/2/204.full.pdf

【背景】
 ・CGMの結果を日常の血糖コントロールに反映させることは、成人にとっては有効であるが、
  小児では難しい。
 ・小児1型糖尿病の場合、親が低血糖を恐れるため、血糖コントロールは不良であることが多い。
 ・小児1型糖尿病患者におけるCGM使用の研究は少ない。


【目的】
 ・4-9歳の1型糖尿病患者におけるリアルタイムCGMの効力・安全性、そしてQOLに及ぼす
  影響を評価する。


【方法概要】
 ■デザイン:多施設共同無作為化試験

 ■対象:以下の条件を満たす1型糖尿病患者:146名
  ・4~9歳
  ・HbA1c≧7.0%
  ・12ヶ月以上インスリン治療を行ったもの

 ■割付(1:1の割合)
   ◎RT-CGM群(74名)
     リアルタイムCGMを使用
     1日4回以上の血糖測定を行い、CGMの値を補正する
   ◎コントロール群(72名)
     1日4回以上の血糖測定を行う
   ●どちらの群も目標の血糖値は以下の通りである。
     食前:80-150mg/dL
     食後:<200mg/dL
     眠前:100-150mg/dL
     夜間:80-150mg/dL

 ■評価項目
  ◎主要評価項目
   ・HbA1c≧0.5%の減少(重症低血糖発作なし)


【結果概要】
  ・HbA1cが0.5%以上減少した割合は以下の通りであり、有意差はなかった。
     ・RT-CGM群    :19%
     ・コントロール群:28%
  ・重症低血糖の割合も有意差はなく、両群ともに低かった。

  ・CGMの使用頻度やインスリン治療の種類は、HbA1cに有意な変化はもたらさなかった。
   (若干ではあるが、CGMをあまり装着しない人より、週6日以上装着している方が、
    HbA1cが低下傾向を示した。)

  ・QOL調査では、低血糖の恐れについては、両群に有意差はなかったが、
   血糖モニタリングシステムとしてのCGMの評価は高く、RT-CGM群で有意に高かった。


【結論要旨】
  ・4-9歳の小児1型糖尿病患者において、リアルタイムCGMにおける親の満足度は
   得られたものの、血糖コントロール改善には至らなかった。

  ・その原因としては、目標血糖値が高かったこと及び、親たちの低血糖に対する不安が
   関与していたと推測される。


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【Team DiET の議論】
 本論文で最も鍵となるのは、「誰が追加インスリンを打ったか」にあると思います。
 今回の対象者は4-9歳(平均7.5歳)であることから、多くは小学校通い、日中の大半は
 親の手から離れた状態で過ごしていると推測されます。

 追加インスリンや補食のアルゴリズムの教育を受けたとしても、4~9歳の小児患者が
 正しく理解し、自分自身でインスリンの調整をできるかといえば、明らかに難しいと
 言わざるを得ません。
 まだポンプであれば、自身で追加インスリンを打てるかもしれませんが、活動の激しい小児の
 追加インスリン量を決めることは、大人でも難しいのではないでしょうか。

 今回、リアルタイムCGMのメリットを生かす教育がどのくらいの時間をかけて、どのような
 内容で行われたかというのは、公開されていません。
 追加インスリンは誰が打ち、実際に追加インスリンを打つことができた患者の割合は
 どれだけなのか、また、試験の開始前後での1日のインスリン量の変動など、
 もっと細かい解析を行い、結果を報告してもらいたいと思います。

 本論文の結果で不安に思うことは、「リアルタイムCGMは安心感を与えることはできるが、
 血糖コントロールの改善にはつながらない」という部分がクローズアップされてしまうことで、
 小児へのCGMの使用が無駄と思われてしまい、CGMの開発が遅れてしまうことです。

 先にも述べた通り、今回の研究は未開発な部分が多く、もっと多くのサブ解析を行い、
 リアルタイムCGMで効果のあった患者の層別解析や、リアルタイムCGMの効果的な使用法などを
 明確にし、日常診療に役立つようなメッセージを出して欲しいと考えます。


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