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Team DiET Colloquium vol.8

糖尿病、空腹時血糖値、死因別死亡リスク

Diabetes Mellitus, Fasting Glucose, and Risk of Cause-Specific Death
(N Engl J Med 2011; 364:829-841 | March 3, 2011)
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1008862

【背景】
 糖尿病が、血管系疾患のリスクを倍増させるという報告はされているが、
 糖尿病や高血糖が、血管系以外の病態による死亡リスクとどの程度関連しているかは、
 明らかにされていない。


【目的】
 十分な対象数による信頼性のあるデータを用い、糖尿病や高血糖による
 血管系疾患以外での早期死亡の関連性を明らかにする。


【方法概要】
 ■対象
  97件の前向き研究の参加者820,900人
 ■解析
  メタ解析

 上記対象に発生した123,205件の死亡に関する個々のデータから、ベースラインの糖尿病の状態
 または空腹時血糖に基づき、死因別死亡のハザード比を算出した。


【結果概要】
 年齢、性別、喫煙状況、体格指数(BMI)による補正後では、糖尿病者の非糖尿病者に対する
 ハザード比は、
  ① 全死因死亡 1.80(95%信頼区間 [CI] 1.71~1.90)
  ② 癌による死亡 1.25(95%信頼区間 [CI] 1.19~1.31)
  ③ 血管系の原因による死亡 2.32(95%信頼区間 [CI] 2.11~2.56)
  ④ その他の原因による死亡 1.73(95%信頼区間 [CI] 1.62~1.85)
 であった。

 年齢、性別、喫煙状況、BMI、収縮期血圧、TCを補正しても、ハザード比に大きな変化は
 認められなかった。
 しかし、FPGやHbA1cで更に補正すると、ハザード比に大幅な低下が認められた。

 糖尿病は非糖尿病と比較して、肝癌・膵癌・卵巣癌・大腸癌・肺癌などによる死亡の
 ハザード比が高く、また、腎疾患・感染症・肝疾患・外的原因、意図的な自傷行為などによる
 死亡のハザード比が高くなった。

 空腹時血糖値100 mg/dL前後で、死亡ハザード比は非線形的に上昇したが、を超えると死亡との
 関連がみられたが、70~100 mg/dLでは関連はみられなかった。

 50歳(男性)の糖尿病患者は、非糖尿病患者と比較し、平均約6年余命が短い結果となった。
 その原因の約60%は血管系疾患による死亡であり、残りの約40%は血管系以外の原因による
 死亡に起因していた。


【結論要旨】
 糖尿病は、いくつかの主要な危険因子(血圧,脂質など)とは独立して、血管疾患以外にも、
 いくつかの癌、感染症、外的要因、意図的な自傷行為、変性疾患による多数の早期死亡との
 関連がある。

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【Team DiET の議論】
 今回の研究の対象が、前向き研究の参加者であるため、一次予防による結果ではなく、
 何らかの介入試験の結果であることを加味しなくてはいけないが、
 肝腫瘍、肝疾患で死亡するケースが高く、日本の研究結果と類似している。
 UKPDS 23 では、2型糖尿病患者のリスクファクターとして、LDL-C、次いでHDL-Cが
 挙げられており、JDCSでは、LDL-C、次いでTGが挙げれらているが、今回の結果では
 TCやHDL-Cで補正を行っても、ハザード比に変化は見られなかった。
 この結果から、LDL-C、HDL-Cのコントロールも大切であるが、
 全死因死亡のリスク低減のためには、血糖コントロールも重要であることが読み取れる。


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