Team DiET メールマガジンバックナンバー
Team DiET Colloquium vol.82
血糖コントロール不良な2型糖尿病患者を対象としたエキセナチド2mg/週またはリラグルチド1.8mg/日との有効性比較検討試験<DURATION-6試験>
Exenatide once weekly versus liraglutide once daily in patients with
type 2 diabetes (DURATION-6): a randomised, open-label study
(The Lancet, Volume 381, Issue 9861, Pages 117 - 124, 12 January 2013)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2961267-7/abstract
【背景】
・GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善させ、
体重を減少させる効果がある。
・GLP-1受容体作動薬のインスリン分泌促進は血糖依存性であり、
グルカゴン分泌を抑制し、食欲を減退させる。
・これまでの報告では、1日に2回のエキセナチドよりも、週に1回のエキセナチドや
1日に1回のリラグルチドの方が血糖改善効果が高かった(DURATION-5試験、LEAD-6試験)。
【目的】
・経口血糖降下薬や生活習慣の改善を行ってもコントロール不良な2型糖尿病患者において、
週に1回のエキセナチド投与と、1日に1回のリラグルチド投与を直接比較し、
その効果および安全性を検討する。
【方法概要】
■デザイン:多施設無作為化非盲検試験(19カ国105施設)
■対象:以下を満たす18歳以上の2型糖尿病患者;911例
・生活習慣改善や最大量の経口血糖降下薬を内服しても血糖コントロール不良
・HbA1c:7.1~11.0%
・BMI≦45kg/m2で、最近3か月の体重安定者
■割付:(1:1の割合)
◎エキセナチド群(461例)
エキセナチド2mgを週1回注射
◎リラグルチド群(450例)
リラグルチド0.6mgから開始し、1.2mg→1.8mgへ1週間で増量させる
(消化器症状が強い場合は増量を遅らせる)
4週間を超えても1.8mgへ到達しない場合は試験から脱落
■追跡期間:26週
■主要評価項目
ベースラインと26週後でのHbA1cの変化
■副次主要評価項目
HbA1c≦7%の患者割合、体重、空腹時血糖、血圧、血中脂質濃度、低血糖頻度
安全性と忍容性、患者満足度
【結果概要】
・HbA1cの最小2乗平均(±SE)比率は、以下の通りであり、リラグルチド群の方が
エキセナチド群よりも高かったが、その差は非劣性基準を満たさなかった。
エキセナチド群:-1.28%
リラグルチド群:-1.48%
・HbA1cの最小2乗平均比率は、8週および14週でエキセナチド群と比較して、
リラグルチド群で有意に低下(P<0.0001)していたが、26週ではP=0.0018であった。
・体重の最小2乗平均(±SE)比率は、以下の通りであり、リラグルチド群の方が
エキセナチド群よりも高かったが、その差は非劣性基準を満たさなかった。
エキセナチド群:-2.68kg
リラグルチド群:-1.48kg
・体重の最小2乗平均比率は、1週、2週、4週、8週、14週および16週で
エキセナチド群と比較して、リラグルチド群で有意に低下(P<0.0001)していたが、
26週ではP=0.0005であった。
・有害事象の発症率については以下の通りであり、エキセナチド群の方が低かった。
エキセナチド群:283例(61%)
リラグルチド群:307例(68%)
・最も発現率の高かった有害事象は、悪心・下痢・嘔吐であったが、
両群とも経時的に低下した。
・有害事象による試験中止率は以下の通りであり、エキセナチド群の方が低かった。
エキセナチド群: 12例( 3%)
リラグルチド群: 24例( 5%)
【結論要旨】
・1.8mg/日のリラグルチド投与は、2mg/週のエキセナチド投与よりも、HbA1cと体重を
低下させる。
・両群とも概ね忍容性は高かったが、リラグルチド群は消化器症状の有害事象が多く、
継続不可能な割合が高かった。
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【Team DiET の議論】
本試験は海外で行われた試験であり、リラグルチド(ビクトーザ)の投与量が
日本での最大投与量(0.9mg)の倍である1.8mgとなっているところに注意をして
読み進めて欲しいと思います。
本試験で用いられた週1回のエキセナチド(ビデュリオン)ですが、
日本でも2012年3月に製造承認を取得しており、今年の2月22日に薬価収載されました。
投与量は本試験と同じく2mg/週であり、仮に日本で同試験を行う場合、
2mg/週エキセナチドv.s.0.9mg/日リラグルチドとなるため、今回の試験で満たせなかった
非劣性基準を満たし、リラグルチドと同様もしくはそれ以上の血糖改善効果を
示せる可能性はあります。
今回の論文では薬物動態が示されていないため、仮説でしかないのですが、
GLP-1受容体作動薬のweekly製剤は、血糖改善効果が悪い可能性があります。
リラグルチドの半減期は13時間であり、週1回エキセナチドは2週間です。
リラグルチドの場合、一旦薬の効果が切れた後、次を投与することになりますが、
週1回エキセナチドの場合、薬の効果が持続している間に次を投与することになるため、
GLP-1抵抗性ができ、効果を発揮できなかったのではないかと考えられます。
Team DiETとしても、週1回エキセナチドが1.8mg/日リラグルチドに対して、
非劣性基準を満たさなかったのは驚きであり、思ったより良い結果にならなかったと
感じたのが実状です。
今回の結果だけで考えると、週1回エキセナチドのメリットは週に1回の注射という
利便性のみとなり、メリットにかけるように思います。
更にQOLの結果では、両群に差がなく、利便性自体もメリットと言えない可能性があります。
weekly製剤は、徐々に効いていく必要があるため、太い針を使用した皮下注射です。
当然、痛みも伴うため、QOLにおいても有意性を示せなかったと考えられます。
ですが、週1回エキセナチドは完敗した訳ではないと思います。
全体的なQOLを見れば、有意差はなかったかもしれませんが、患者の中には、
太い針の痛みより、週1回の利便性を求めている患者もいるはずです。
治療方針は医師が立てますが、医師の独断で決めてしまっては、服薬アドヒアランスは
向上しないと思います。
治療法を選択することは、人生を選択することです。
医師が先入観で治療法を押し付けるのではなく、複数の選択肢のメリットとデメリットを
充分に説明して、患者と共に治療方針を立ててほしいと思います。
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