Team DiET メールマガジンバックナンバー
Team DiET Colloquium vol.18
無症候性副腎皮質ホルモン過剰症の診断と治療
Diagnosis and Treatment of Subclinical Hypercortisolism
(J Clin Endocrinol Metab; 96(5):1223-1236 | May 1, 2011)
http://jcem.endojournals.org/content/96/5/1223.full.pdf
【背景】
・無症候性副腎皮質ホルモン過剰症(SH)とは、血中のコルチゾールが過剰であるにも関わらず
クッシング症候群に典型的な、満月様顔貌や赤紫皮膚線条などの所見は見られない病態です。
・SHは成人人口の0.2〜2%存在することが示唆されているものの確たる診断基準や治療について
明確になっていない。
【目的】
・これまで報告されてきた研究を元に、SHの診断基準、治療方針、治療後の代謝効果などに
ついて検討する。
【結果概要】
<SHの診断について>
・各視床下部-下垂体-副腎系マーカー(HPA)系マーカーの陽性率は文献ごとに異なり、
様々である。
・SHを診断する際に用いる診断基準としては、1mgデキサメサゾン抑制試験(DST)が、
29文献中21件で、最も多く利用されていた。
・1mgDSTで用いられるコルチゾールのカットオフ値は各文献で異なり、
3μg/dlが最多の11件、次は5μg/dlで8件であった。
・1mgDST(カットオフ値3μg/dl)反応低下、尿中遊離コルチゾール上昇(UFC)、
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)低下のうち2つ以上満たす場合は、感度61.9%、
特異度77.1%と精度が高い事が示された。
・よって、SHの診断には,1mgDST(カットオフ値3μg/dl), UFC, ACTHを組合わせた診断が
最も適していると考えられる。
<SHの合併症について>
・2型糖尿病と骨粗鬆症の症例におけるSHの有病率は、2型糖尿病で2.6〜10.8%、
骨粗鬆症で3.8〜4.8%であり、一般成人の0.2〜2%に対して高い傾向となった。
<SHの治療について>
・SHの治療として副腎腺腫摘出を行った場合、血圧は10件中7件、体重は8件中3件、
空腹時血糖は10件中6件、骨密度は1件中1件改善が認められた。
・合併症を有するSHに対して、副腎腺腫摘出術は保存的治療より有益である事が示唆された。
【結論要旨】
・SHの診断には、1mgDST(カットオフ値3μg/dl)、UFC、ACTHを組合わせた診断が
適している。
・SHは高血圧、糖尿病、肥満、骨粗鬆症と関連がある。
・SHに対する副腎腺腫摘出術は,高血圧や糖尿病を含む合併症の改善につながる。
・今後は、SHの診断や治療に関する更に大規模な前向きランダム化臨床試験が期待される。
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【Team DiET の議論】
SHの初期徴候といわれるコルチゾール日内変動の消失は、今回のメタ解析でも感度、
特異度ともに高かったが、入院して実施する必要があるため一般的ではない。
また、ACTH, コルチゾールの基礎値は変動が大きく、特異度が低下する。
今回のメタ解析では1mgデキサメサゾン抑制試験(DST)が感度・特異度ともに
高く推奨された。
ただ、スクリーニングされたSHは、副腎性が下垂体性より高頻度で、
本来の頻度と逆転していた。
下垂体性SHをスクリーニングするには、すでに報告されているように
0.5mg DSTがより適している可能性がある。
骨粗鬆症や2型糖尿病患者でのSH頻度が示された。
家庭医にもスクリーニングを推奨するには医療経済的側面も考慮する必要がある。
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