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Team DiET Colloquium vol.43

臨床診療における減量介入効果の比較

Comparative Effectiveness of Weight-Loss Interventions in Clinical Practice
(N Engl J Med 2011; 365:1959-1968 | November 24, 2011)

http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1108660

【背景】
 ・肥満は、重要かつ世界中で増大している公衆衛生問題であり、主要な心血管リスク因子
  (血圧、脂質代謝、糖尿病など)に悪影響を及ぼす。
 ・多くの臨床試験で、適度な減量が心血管リスク因子に効果的に働くことが示されているが、
  どれもが徹底的な対面介入についての試験であり、臨床の場における、行動変容介入の効果を
  調べた試験はほぼない。


【目的】
 ・少なくとも1つ以上の心血管リスク因子のある肥満患者において、減量のため介入を行い、
  その有効性を評価した。


【方法概要】
 ■デザイン:多施設ランダム化比較試験(プライマリケア施設6ヵ所)

 ■対象:以下の条件を満たす415例
  ・21歳以上の肥満成人
  ・1つ以上の心血管リスク因子(高血圧、高コレステロール血症、糖尿病)をもつ
  ・プライマリケア診療施設通院患者
  ・コンピューター使用者であり、基本的なコンピュータースキルをもつ

 ■割付
  ◎自己管理群(138名):
    ・プライマリケア医による通常診察のみ
  ◎遠隔支援群(139名):
    ・プライマリケア医による通常診察に加え、減量進捗状況を説明
    ・試験専用のWebサイトの利用
     (学習ツール、体重・摂取カロリー・運動のモニタリング及びフィードバック機能)
     (7日以上ログインなければメール勧告、その後14日以上ログインなければ電話勧告)
    ・電子メールによる遠隔減量支援(専門家による食事・運動指導)
    ・コーチによる電話指導
  ◎対面支援群(138名)
    ・遠隔支援群と同一の指導内容
    ・ただし、コーチとは電話ではなく、対面での個別指導および集団指導

 ■主要評価項目
  ・試験開始時から24ヶ月後の体重

 ■副次評価項目
  ・試験開始時からの体重・BMI変化率、体重増加のない患者割合、5%以上の体重減少患者割合


【結果概要】
  ・2年間の試験を終了時の体重変化平均および5%以上の体重減少の割合は、
     自己管理群:-0.8kg(18.8%)
     遠隔支援群:-4.5kg(38.2%)
     対面支援群:-5.1kg(41.4%)
   であり、自己管理群と比較すると、2つの介入群は有意に体重が減少したが、
   2つの介入群間では、差は見られなかった。
  ・ドロップアウトについては、遠隔支援群が13%、対面支援群が15.9%だった。
  ・ただし、遠隔支援群での電話指導は、試験期間を通して通話率が高いのに対し、
   対面支援群での対面指導参加率は、個別指導ではじめ高かったが試験終了の間に低下、
   集団指導については、はじめから参加率は半分程度で、試験終了の間に5%程度に低下した。


【結論要旨】
 ・遠隔支援群でも対面支援群と同様に、肥満患者は24ヵ月の間に臨床的に有意な減量を達成し、
  それを維持することができた。


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【Team DiET の議論】
 今回の結果だけ見てしまえば、生活指導は対面でなくても効果があると思われてしまいそうだが、
 注意してもらいたいのは、対象となった患者の偏りである。

 パソコンスキルがある肥満成人を考えると、動くのが苦手で、できれば家でパソコンやゲームを
 したいと思っている人を想像してしまう。
 この事から、今回の被験者は人とのコミュニケーションが苦手なのではないかとの疑問が残る。

 今回の試験では、そういった偏った集団に対面支援と遠隔支援を行った場合、遠隔支援でも
 減量効果がある事が証明されただけであり、全ての肥満患者に今回の結果をあてはめては
 いけないと注意喚起しておきたい。

 また、今回のような人とのコミュニケーションが苦手な患者の場合、対面支援が苦痛になって
 しまう事も考えられる。
 熟練されたコーチといえど、個々のキャラを見分けるのは困難で、患者によっては、
 対面指導中にやる気を削がれる事を言われたと感じてしまう可能性がある。
 試験開始前に人とのコミュニケーション能力を判別した上で試験を実施すれば、更に興味深い
 結果になったと思う。

 批判的な意見ばかりだが、今回の論文で遠隔支援でも減量に成功した事実があることは、
 今後の生活指導に大きく役立つと考えられる。
 ただ、患者さんは個人差が大きく、人によって様々な考え方があるため、医師や医療従事者は
 それを理解した上で、テーラーメイドで適切な介入を行うべきである。


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