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Team DiET Colloquium vol.41
新規発症1型糖尿病患者を対象としたテプリズマブ(teplizumab)を用いた抗体療法の有効性比較検討試験≪第Ⅲ相臨床試験≫(Protégé試験)
Teplizumab for treatment of type 1 diabetes (Protégé study):
1-year results from a randomised, placebo-controlled trial
(The Lancet, Volume 378, Issue 9790, Pages 487 - 497, 6 August 2011)
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(11)60931-8/fulltext#article_upsell
【背景】
・小規模な研究(第Ⅰ,Ⅱ相臨床試験)において、発症早期の1型糖尿病症例に対する
抗CD3抗体療法の有用性(β細胞の機能保持およびインスリン必要量の減少)が
報告されている。
【目的】
・12週以内に1型糖尿病と診断された患者を対象にCD3抗体の1つであるテプリズマブ
(teplizumab)を投与し、抗体療法の有効性と安全性を評価する。
【方法概要】
■デザイン:多施設無作為プラセボ対照割付試験
■対象:以下の条件を満たす1型糖尿病患者:763名
・発症12週以内の1型糖尿病患者
・北米、欧州、イスラエル、インドの試験参加83施設に通院中の患者
■割付
・被験者を下記の4群に2:1:1:1の割合で割り付け、試験開始時と開始後26週時の2点で
テプリズマブまたはプラセボを投与した。
①テプリズマブ最大用量14日間群(207名)
②テプリズマブ低用量14日間群(102名)
③テプリズマブ最大用量6日間群(106名)
④プラゼボ群(98名)
■試験期間:2年間(※ただし、今回は1年間での中間結果である)
■主要複合アウトカム
1日のインスリン必要量が0.5U/kg以下(60kgの人で30単位)であり、
試験開始1年時にHbA1c<6.5%をともに満たす患者の割合
■副次主要アウトカム
HbA1cのベースラインからの変化
■副次アウトカム
・AUC(Cペプチド)のベースラインからの変化
・1日のインスリン必要量が0.5U/kg以下であり、試験開始1年時にHbA1c<7.0%を
ともに満たす患者の割合
【結果概要】
・主要複合アウトカムは以下の通りであり、1年時点で4群間に有意差はなかった。
①テプリズマブ最大用量14日間群:19.8%
②テプリズマブ低用量14日間群:13.7%
③テプリズマブ最大用量6日間群:20.8%
④プラゼボ群:20.4%
・副次アウトカムについても、1年時点で4群間に有意差はなかった。
・しかし、テプリズマブ最大用量14日間群では、プラセボ群と比較し、AUC(Cペプチド)の
低下が少なく、β細胞の機能が保持されていた。
・また、1日のインスリン必要量が0.25U/kg以下であり、試験開始後1年時にHbA1c<7.0%を
ともに満たす患者についても、テプリズマブ最大用量14日間群では、プラセボ群と比較し、
割合が高い結果であった。
・Cペプチドについてサブグループで解析を行った結果、年齢では8〜11歳、地域では米国で
低下が少なく、β細胞の機能が保持されていることが判った。
・また、Cペプチドの保持または増加患者割合について、プラセボ群が28%だったのに対し、
テプリズマブ最大用量14日間群では40%であった。
・インスリン使用量別に検討しても、テプリズマブ最大用量14日間群では、プラセボ群と
比較し、HbA1c<7.0%の達成割合が高かった。
【結論要旨】
・過去の小規模な研究(第Ⅰ,Ⅱ相臨床試験)では、テプリズマブの有効性が示されたが、
今回の第Ⅱ相臨床試験では、各群間で主要および副次アウトカムに明らかな有意差を
認めなかった。
・しかし、予備解析の結果、過去の臨床試験と同様にテプリズマブ投与群では、プラセボ群と
比較して、Cペプチド分泌が保持され、より少ないインスリン量で血糖コントロールが
実現される結果であった。
・診断後早期、あるいは小児の1型糖尿病患者を対象とした場合、テプリズマブによる
免疫治療的な介入は、β細胞機能の低下を予防し、インスリン必要量を減少させながら、
良好な血糖コントロールを実現する可能性がある。
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【Team DiET の議論】
癌や白血病など、様々な疾患において抗体療法が行われるようになり、医学がますます
進化していると感じるが、抗体療法の一番の障害は高額な医療費にある。
しかし、それなりの結果が得られれば、「背に腹は変えられぬ」と割り切れる思いもあるが、
今回の試験結果で、治療の満足度を得るのは難しいと考える。
しかし、プラセボ群でも良好な結果が見られたことから、もしかすると1型糖尿病特有の
ハネムーン期のピリオドをみている可能性もあり、更には、第Ⅲ相臨床試験中で、
充分な治療が受けられたため、ハネムーン期真っ直中の状態を見ている可能性も考えられる。
今回の結果は、中間報告であるため、2年後の最終報告がどのような結果になるか楽しみである。
ただ、除外基準にインスリン分泌能が規定されていなかったり、インスリンポンプ導入の数が
明確になっていなかったりするので、たとえ2年後の結果で有効性が確認されたとしても、
今後、明らかにしていかなければならない課題も多いと考える。
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